編集後記
皆さんはご存知だろうか、
「それじゃあ、今年の委員長は高橋さんで」
人間、自分に都合の悪いことは、本当に聞こえなくなるものらしいということを。
・・・・・ 実際、あの時は、その言葉の意味をほとんど理解していなかった。
「―――――― は、」
そう返事をしたのを、なんとはなしに覚えている。
2008年3月29日、「学校へ泊まろう!」企画、最初のミーティングでのことだった。
もっとも、そのときはまだ何をするかも決まっていなかったけれど。
【ふたまるまるはち、夏】
早いもので、あれから半年以上の月日が経った。
正直、企画本番のことさえも、遠い昔のことのように思える。
それでも。
それでも覚えているのは、あのときのにおいだ。
においといっても、嗅覚のみで感じるものではない。
最初に皆が集まったときの、少し戸惑ったような雰囲気、
ケバブの焼けるおいしそうな匂い、
ライブで感じた一体感、
急いで食べた晩御飯のおいしさ、
楽しそうな笑い声。
そんな、五感全てで感じる、人が集まったとき独特の空気のようなものだ。
・・・・・ それって、全部覚えているってことじゃあないのか、って?
それはまた、ちょっと違う。というのも、あの日、あのときに感じたものが、確かにリアルだったからだ。
今私が感じているのは、こう、ふわふわしていて、とても曖昧な、それこそ空気みたいなもので ―― 。
だから、「におい」なのだ。おわかりだろうか。
まあ、これはどうでもいいことなので、なんとなく伝わっていればそれでかまわない。
とにかく、それが今の私に残ったものだ。
皆さんのもとには、あのイベントを通じて何が残ったろうか。同じとき、同じモノを共有しても、そこに感ずるものは千差万別。そして、そこから得るものも。何にせよ、なにかの形で、このイベントのことがあしあとを残せたら、と思う。そして、機会があれば、皆さんの中に残ったものが何だったのか、聞かせていただきたいものだ。
さて、イベント当日の様子はCAMNETのイベントページを見てもらうことにして、ここではその前段階、準備期間のことについてほんの少しだけ触れておこう。
先にも述べたように、このイベントの準備には半年ほどを要した。メインスタッフは20人以上、他にも手伝ってくれた方は数え切れないほど多い。その大所帯が月一回のミーティングには、顔を寄せ合って、ああでもない、こうでもないと話し合いを行った。どこで、なにをする?から持っていくもの、トイレの場所まで確認したこのミーティングは、なかなかに困難なことも多かった。
まず、何をするのか?というところからまとまらない。一つのことを決めるのにもかなり時間がかかったように思う。それから、ミーティングの日取りを決めるのにも、あっちを立てればそっちが立たず、何日か悩んだ記憶がある。
そりゃあ、あの人数だから、当然といえば当然だ。
けれど、アレだけの人数があれだけのアイデアを出し合ったからこそ、あのイベントが完成したのだ。つまり、無駄な時間なんて一切なかったのだと、今更ながらに実感している。
思えばイベントの内容を決めたときもそうだった。
「なんか、岡大とか ・・・・・ 学校でも占拠して、立てこもりますか?」
あるスタッフの発言だ。
冗談とも思える発言は、別のスタッフの心をとらえたようで ―― 。
「立てこもり?いいね、それ」
そうして今回の企画の原型が誕生したのだ。
一人だと、どうせ無理じゃあないのか、なんて思ってしまうようなことでも、まわりの後押しでどうにかなったりする。これほど見ていて気持ちのいいことはなかった。
「一人じゃ無理でも皆なら」なんて、どこかで見たような台詞だけれど、こういうことは本当にその場にたってみないと、分からないものなのかもしれない。現に、今までの私はわかったつもりでいただけなのだと、反省した。
きっと、こんな「つもり」はまだまだたくさんあるのだと思う。それを、今後社会に出るにあたって、たくさん経験していけたらいい。そんな風に将来のことにも思いを馳せた、大学4年生の夏であった。
最後になってしまったけれど、参加してくださった皆さん、山の学校の方々、地域の方々、スタッフのみなさん、支えてくださった全ての皆さんへ、本当にありがとうございました。
2008年10月5日
学校に泊まろう!実行委員会 委員長/高橋 直美
CLUB CAMNET
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